やしちの読書レビュー

元大型書店コミックフロア責任者によるレビューブログ

健康で文化的な最低限度の生活 1巻

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こんにちは、やしちです。

 

今回は「健康で文化的な最低限度の生活 1巻」の感想を書いていきます。

「もくじ」

福祉保健部生活課(福祉現業)に命ずる

空気が読めない、人の話を聞かない自覚がある主人公(表紙の女の子)の義経えみる。晴れて公務員となり、社会人となったことを機に改善しようとするも、いきなり入庁式でやらかしてしまいます

 

でもこういう天然な女の子ってかわいいですよね(二次元に限る)

 

今年の新人はえみるを含めて5人。そのなかにはやらかしてしまった相手(ショートカットの釣り目の女性)も一緒です。

 

むしろこういうとき少しでも話した相手がいるのはラッキーだと思うんですよね。やらかすといっても相手に何かしたわけではないですし。

 

そんなこんなで福祉課でのえみるの毎日がスタートします。

福祉課とは

生活保護を受給する人は多くの理由を抱えています。その理由に介入していくことで、そこでお金、この場合は生活費が国からもらえるかどうかが決まる。

 

これはしんどい仕事ですよ。しかも一人で100件以上抱える。先輩職員が言うのですが、まじめに一人ひとり取り組んだら精神的に参ってしまいそうです。

 

新人に任せて大丈夫なのか?と思うもえみる以外の4人はそれぞれ自分の長所を生かしてケースワーカーとして接しています。今までの経験で培ったものですね。

 

一方でえみるは知識もないし臨機応変に対応もできない。でも何とかしようとする姿勢が応援したくなります。

 

周囲の先輩、教育係なのかいつも一緒に行動する先輩(半田さん)がえみるにやさしく、生活保護の知識がない、どういう仕事なのかイメージがわきにくいえみるや私たち読者へも親切に説明してくれます。

様々な家庭環境

コミック最初にえみるがとってしまった、受給者からの「死にます」という電話。いつものことだと周囲は思っていますが実際に死んでしまう。これにショックを隠せないえみる。

 

いきなりこんな電話取ったら誰でもあせるわ。でも先輩職員は動じないってことはこの職場では日常的なのか?恐ろしいな。

 

いつもの金額が振り込まれていないと怒鳴り込んでくる人や、間違いなく子供にやつ当たっている見た目おとなしそうなお母さんとか。

 

私は失業保険を受給した経験がありますが、制度として最後の砦なんですよね。どんなに普段温厚な人でも生きるか死ぬかになればそりゃ怒ります。

咳き込む理由は…

そのあとは新人も含めて就労支援員の方と一緒に受給者と面談します。これから働けるのか、働く意思はあるのかということですね。

 

福祉事務所で面談するとずっと咳き込んでいる阿久沢さん。健康診断するも異常なし。

 

阿久沢さんも事務所は恐ろしい場所であるらしく、極度に緊張すると咳が止まらなくなるとのこと。精神的なものでこうなることは確かにあるらしいです。警察官を見ると悪いことしてなくても緊張するアレでしょうか。

 

阿久沢さんのアパートで借金が発覚、えみるは半田さんのアドバイスを受けて法テラスを案内しますが、半田さんは拒否。

 

法テラスも敷居が高いですよね。「法」ってだけで躊躇するのもわかります。でも債務整理ですしそうも言ってられませんが。

やる気十分!でも…

夫のDVが原因で離婚した岩瀬さん。すぐにでも働きたい!生活保護なんてすぐに卒業したい!

 

国がモデルケースとしていそうな人。研修DVDで出てきそうな。実際こんな人は稀ではないでしょうか。

 

すぐに正社員での介護職と居酒屋でのバイトが見つかります。しかしその後連絡が取れなくなって…偶然見かけて声をかけるも逃げられてしまいます。後日改めて面談となり、岩瀬さんを担当している熱血新人七条君は岩瀬さんを追い込みます。

 

七条君はやりすぎですね。福祉は大なり小なり精神的に参っている人が来ると思うので、印象からは大丈夫でも中身はボロボロってこともあるんじゃないかな。

 

岩瀬さん。面談室を出たら一直線に窓へ向かい開けます。風景から3階以上。目がやばいです。そこに偶然通りかかる就労相談員が声をかけます。大丈夫といってトイレに行くも、個室で無表情のまま涙がボロボロ出てきます。

 

岩瀬さんはすべてを受け止めてしまうタイプだと思うんですよね。そういう人が受け止められなくなったもう…。

 

再度面談で就労相談員は岩瀬さんに求職活動を休むように勧めます。七条君と岩瀬さんは「えっ?」となりますが、いや無理だろ。働けないよ。休むときは休め!

編集後記

生活保護」という制度はなんとなく知っていましたが、この1巻をを読んで改めて必要だなと思います。

 

不正受給が国で問題視されていて締め付けも激しいです。でも本当に必要としている人、たとえばコミックでも出てきた母子家庭で助けを求める相手もいない人、身寄りのない年金では最低限度の生活すらママならない老人、周囲に助けを求めることができないけれど大きな病気にかかってしまった、でも障害年金の受給はできない人たち。

 

彼らには絶対に助けが必要なんですよね。

 

福祉という砦の最後の番人である、「福祉課」についてコミックということで多少デフォルメされた部分もあると思いますが、描かれていることはリアルでした。下手に入門書を読むよりよほどためになります。

 

オブラートに包まず言うなら、国は外国援助する余裕があるなら国民助けろよ。世界2位の税金大国で税金を納めるために働いているといっても過言ではないのに、現場で職員や受給者が制度の不備の多さから泣いてるんだぞ。国民あっての外交だろうが。

 

ちょっと熱くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。