やしちの読書レビュー

元大型書店コミックフロア責任者によるレビューブログ

「『感想』重版出来 8巻」と、これから漫画家を目指す人たちへ

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こんにちは、やしちです。

 

今回は「重版出来 8巻」の感想になります。

「もくじ」

中田先生の場合

父親が世話になっている福祉事務所から封筒が届いたり電話連絡が来たり。電話連絡に切れてケータイを壊す中田先生。

 

これ壊したら編集者とも連絡取れなくなるんじゃないか?

 

なんとかして中田先生のデビュー作「ピーヴ」を成功させたい黒沢はプルーフ(書店員に見てもらう見本)を作ることに。

 

しかし父親のことがどこかで気になっているんでしょうか。仕事が進みません。そんななか母親と会うことに。

 

中田先生のこれまでが壮絶すぎて話が重くなりますね。出版業界である必要性を感じません。

 

なぜ子供時代悲惨だったから漫画なのか。首輪でつなぐような母親が漫画を買い与えるか。与えたとしてなぜ中田先生はここまでねじれたのか。

 

8巻の時点ではそれがはっきりしません。9巻に期待かな?

リアル書店員からみた編集とプルーフ

プルーフですか。書店員からすると凄く大変なやつ。なぜなら重版出来ではコミックのプルーフは珍しい扱いですが、実際はそうでもない。

 

そこそこに体力がある出版社は配ってきます。あとラノベのゲラ(これも見本)も凄い数来ます。

 

みんな大好き電○文庫。これの新人賞って全部見本あるんだぜ!スゲーだろ。あとはGAとガガガかな。ガガガは有名な先生の作品も送ってくる。

 

読めるか!

 

私はコミックやラノベが好きで担当になったのではなく、支社の担当売り上げで本社を抜いたため抜擢されての責任者でした。だからプルーフが本当に苦痛です。

 

あとピーヴ関連で編集の黒沢が書店員に意見を求めるシーンがあるんだけれど、そもそも編集と書店員が会うのってコミック部門ではありえない。

 

可能性としてはサイン会で先生の付き添いでくる編集とかですね。編集、気持ち悪いくらい先生に気を使っていますよ。

 

編集、営業、売り場がもっと連携できれば良い作品が出来るとはいわないけれど、売り上げは上げることが出来ます。

 

でも出版関係者はプライドの塊です。こちらが意見を挟む余裕なんてありません。売ってもらっているではなく、売らせてやってるが基本スタンス。

 

遅かれ早かれコミックで紙媒体はなくなります。これは断言できる。

黒沢の一人暮らし

閑話休題のお話し。

 

一人娘である黒沢の一人暮らしを両親はさびしがります。

 

一人娘だとそうなんでしょうね。でも人生で一度は一人暮らしを経験しておくべきだとは思う。

 

物件を探す中で谷中という場所にインスピレーションを覚えます。

 

レトロな街なのでしょうか。私は行ったことがないので行ってみたいですね。

 

その谷中に決めた黒沢。両親に許可をもらいついに一人暮らし開始です。

 

父親号泣。一人娘だとこうなるのか…。

マキタ先生の場合

自分が書きたいものではなく、周囲が求めている(と自分が思っている)ものを書くマキタ先生。

 

実際はマキタ先生みたいな漫画家多いですけどね。9割そう。「またかよ」とか思うしコミック担当ですら「何が違うの?」としか思えない。

 

担当編集の五百旗頭さんから「パンツを脱いでほしい」といわれる。

 

言いたいことはわかるけれど、はんこコミックを量産しているのはその編集の指示なんですけどね。実際は。

 

編集と本屋は接点ないけど先生と本屋は結構接点あるんですよ。超売れっ子(海賊王クラス)は来ないけど映画化した作品の先生なら割と来ていましたし。

 

あとはデビュー間もない新人さんとか。

 

さて、漫画家の飲み会に呼ばれたマキタ先生。そこで自分が好きな「ロッキー」を馬鹿にされます。

 

しかし、同じくロッキー好きなニールソン先生が馬鹿にしてきた人を論破しようとする。

 

ここは見方を変えればニールソン先生がロッキーは良い映画と周囲に押し付けているようにも見えるんですよね。

 

ただ、何かにつけて人の意見を「正解」とか「間違い」って言う人には腹が立ちますけどね。はいはい間違いですよ、お前の中ではな!

 

そこで何かが覚醒したマキタ先生は泣きながらロッキーが好きだと絶叫。描く漫画も五百旗頭さんから評価されます。

 

情緒不安定な人しかでてこないな、この漫画。

編集後記と漫画家を目指す人たちへ

重版出来は出版業界あるあるではありません。BL並にファンタジーです。

 

読者に媚びたコミックほど売れます。どこかで見たキャラクター、設定。その焼き直しで作品は回っています。これは事実。

 

パクリとかそういうのではもちろんありません。だから言いたいのは、これから漫画家やラノベ作家を目指す人たちへ。

 

既存の作品と似通ってしまうことを恐れないほしいです。売れている作品も全て焼直しです。新しい作品は絶対にありません。絶対です。

 

アレは「これ」のパクリ。よく見ますね。でも、その見方で行けば「これ」」もそれのパクリなんですよ。

 

だから周囲の評価を恐れず、描くのが好きなら続けるべきです。描き続けなければデビューできません。

 

毎月恐ろしい数の作品を仕事として読んで来ましたが、ずば抜けて面白い新人なんてほとんどいませんでした。どっこいです。

 

違いがあるとすれば売れるか売れないか。そこだけです。売れる作品が面白いわけでも新しいわけでもありません。

 

ただのメディア戦略の差です。版元の広告戦略の差です。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。